より良い職場を作るために。パワハラについて学ぼう!

こんにちは、ICTキッズ編集部です。保育士不足が社会的な問題となる中、離職率が高いと言われる保育の現場においても、職場環境の見直しは取り組むべき課題の1つです。

一方、女性の社会進出や価値観の多様化が進むにつれて、職場や学校などでもハラスメント(嫌がらせ)に対する意識が高まっており、最近では「カラハラ(カラオケハラスメント)」や「ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント)」のような種類も登場しています。

ハラスメントとは

ハラスメント(harassment)とは、人を困らせることや不快にさせること、嫌がらせなどを意味します。ハラスメントという言葉が認知されるようになったのは1980年代半ば、性的嫌がらせを意味する「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」がきっかけのようです。当初は男性が女性に対して行う性的嫌がらせとされていましたが、近年は女性から男性に対する行為も含むようになり、時代とともに認識が変化しています。

それに伴い、ハラスメントの種類も多様化しています。例えば、ハラスメント被害を訴えることで2次的に受ける圧力や、飲酒の強要、また医者が患者に対して取る威圧的な態度もハラスメントとされるようになりました。特に職場では、主に上司が部下に対して行う「パワハラ(パワーハラスメント)」が問題になっています。

パワハラの定義

厚生労働省が開設するパワハラ対策についての総合情報サイト「あかるい職場応援団」では、パワハラについて以下のように定義しています。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

上司は与えられた権限の中で、業務上の必要に応じて部下に指示や指導を行うことを職務としています。業務において適正な範囲内であれば、指示や注意等に対して部下が不満を感じる場合でも、パワハラにはなりません。

「職場での優位性」とは、役職による上下関係だけでなく、知識や経験の優位性も含まれます。そのため、その行為がハラスメントに当たるかどうかを判断するためには、あらかじめ「何が適正で何が適正でないのか」を各職場で明確にしておくことが必要です。

パワハラの種類

あかるい職場応援団」では、パワハラを大きく6つに分類しています。また裁判の事例を掲載し、それぞれのケースについて弁護士の考察やコメントが添えられています。

(1)身体的な攻撃

知識や経験による優位性や役職を利用して、叩いたり蹴ったりする行為はパワハラに該当します。薄い書類を投げつけるような行為で人が怪我を負うことはありませんが、このような威圧的な行為もパワハラです。

裁判例の「上司から受けたパワハラを理由とした損害賠償請求」では、被告上司が原告の席の近くに扇風機を置いて風が原告に当たるように向きを固定し、時には「強風」で扇風機の風を当て続けたことを不法行為の1つとして挙げています。嫌がらせの意図が明確であれば、こういった事例もパワハラに認定されます。

(2)精神的な攻撃

同僚の前で上司が執拗に叱責したり、「バカ」「アホ」といった暴言を浴びせる行為はれっきとしたパワハラです。通常、「のろま」「無能」などの言葉が業務の遂行に必要でないことは明らかです。

また役職を利用して、十分な成果が認められるにもかかわらず不当に評価を下げたり、業務のために必要な申請を受け付けないといった行為もパワハラに当たります。このような行為は職場環境や業績にも影響を与え、組織に不利益をもたらしかねません。

裁判例の「同僚社員によるいじめや嫌がらせが、その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、嫌がらせであるとされた事案」は、複数名の社員が同僚に対して行ったいじめや嫌がらせの事例です。原告は長期間、複数の人から悪口を言われたり陰口をたたかれ、上司に相談しても対策を講じてもらえなかったために「不安障害、抑うつ状態」を発症したことが認定されています。

(3)人間関係からの切り離し

職場での優位性を利用して1人だけ別室に席を移したり、職場の忘年会や送別会にわざと呼ばないような行為もパワハラです。「上司から自分にだけ、旅行のお土産を配るのをやめるように言われた」というようなことも、人間関係からの切り離しに該当する可能性があります。職員が仕事を円滑に進めようとしているのに、地位を利用してわざわざ阻害する行為は、組織にとって不必要なものです。

一連の行為が、労働者を孤立させ退職させるための”嫌がらせ”と判断され、代表取締役個人及び会社の責任が認められた事案」は、原告を孤立させて退職に追い込もうとした「嫌がらせ」が認定された事例です。原告は経理担当として入社し、根拠不明の出金等の調査を行ったことがきっかけで、嫌がらせを受けるようになりました。

その後、原告は異動を命じられ、早朝から深夜におよぶ業務を一人で担当することになりました。業務量が多く休憩も取れないことから人員補充を求めましたが、他の従業員にはあまり残業がないにもかかわらず、何の措置も取られませんでした。他にも度重なる嫌がらせがあったことが認められ、代表取締役個人と会社が連帯して損害賠償責任を負う判決が出ています。

(4)過大な要求

明らかに期日までの遂行が不可能な業務を命じたり、就業規則の書き写しのような業務上明らかに不要な作業をさせることもパワハラです。終業間際に仕事を押し付けられることが長期間続く場合にも、パワハラとして認められることがあります。

教員の精神疾患が増悪し自殺したのは、校長らのパワーハラスメントが原因であるとして損害賠償を請求した事件」は、病気療養から復帰した教員に対する校長らの行為に過失が認められた事例です。校長らは医師の診断書で業務量の軽減が必要とされているにもかかわらず、通常の教員と同じ業務を課しました。また県教育委員会等には教員の指導力が不足しているとの報告をし、不要な特別研修を受けさせて精神的な負荷をかけたとされています。

(5)過小な要求

業務上に合理性なく、本人の意欲や能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事をさせたり、仕事自体を与えないようなこともパワハラに該当します。例えば、妊娠した女性職員の身体を案じていたとしても、本人の意思に反して必要以上に業務を減らせばパワハラになる可能性があります。妊娠中の体調の善し悪しは一人ひとりで異なるため、この場合は該当の職員とこまめに相談しながら、業務量を調整する必要があると思います。

裁判例の「内部告発等を契機とした職場いじめと会社の法的責任」は、マスコミに会社の不正を告発した社員が受けた待遇が、会社からの報復として認められた事例です。原告は告発後に会社から異動を命じられ、20数年にわたって個室に配席されました。また極めて補助的な雑務を与えられ、昇格も叶いませんでした。

なお、日本では平成18年4月から公益通報者保護法が施行され、企業・団体による公益通報を理由とした解雇や不利益取扱いの禁止が法的に定められています。

(6)個の侵害

職場での優位性を利用して、交際相手についてしつこく聞き出そうとしたり、信仰している宗教を否定したりするなど、私的なことに過度に立ち入る行為もパワハラの一種です。

労働者に対して会社が課した就業規則の書き写し等の教育訓練が、裁量権を逸脱、濫用した違法なものであるとして、損害賠償請求が認められた事案」では、原告が着用していた労働組合のマーク入りのベルトを被告上司がとがめ、外すように命じたが原告が従わなかったとして、就業規則の書き写し等の教育訓練を命じられた事が違法と認定されています。

<参考>
厚生労働省:あかるい職場応援団

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何故パワハラは減らない?

30年前ならいざ知らず、今ではパワハラがどういうものか知らない人はほとんどいないと思います。企業や団体でも相談窓口を設けたり、何らかの対策を始めているところが多くなっています。しかしその一方で、都道府県の労働局などに寄せられる相談件数は増える一方です。2016年度のパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は7万件を超え、5年連続で最多でした。

部下が上司に対して行うパワハラや同僚の嫌がらせなど、パワハラの定義も広がりつつありますが、職場での優位性を利用した嫌がらせはやはり上司から部下に向けたものが多いです。パワハラが発生しやすい文化が土台となっているケースもあり、何よりも管理職に対する教育の必要性を感じます。

<参考>
日本経済新聞:「パワハラ労働相談7万件、5年連続で最多 16年度(2017/6/16)

パワハラが発生している職場の特徴

<出典>あかるい職場応援団

あかるい職場応援団」では、厚生労働省が主体となって行った調査データも公開しています。それによるとアンケートに回答した企業の8割が「パワハラ対策は経営上の課題として重要である」と考えています。

またパワハラ関連の相談がある職場に共通する特徴としては、企業・従業員ともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」という回答が最も多い結果となりました。上司が冗談のつもりで言った軽口が部下にとって不快に感じられる原因の1つには、コミュニケーション不足によるお互いの信頼の乏しさがあるのかもしれません。

企業の取組み

<出典>あかるい職場応援団

パワハラの予防や解決のために企業が行っている取り組みとして、最も実施率が高いのは「相談窓口の設置」です。一方で効果を実感した取り組みとしては「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」が最も多い結果となっています。

なお、「あかるい職場応援団」ではパワハラ予防や解決策を講じることで「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」「管理職が適切なマネジメントができるようになる」といった副次的効果が得られたという調査結果も掲載されています。

<参照>
厚生労働省:
「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します(平成29年4月28日)
別添1 平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査 主要点(PDF:571KB)

まとめ

保育の現場は女性が多いので、暴力によるパワハラが発生する可能性は低いでしょう。その代わり、陰湿ないじめや嫌がらせなど、人目に触れることが少ないパワハラが横行する恐れがあります。

パワハラは自己顕示欲を満たしたり優越感に浸ったりすることが目的で、組織全体を視野に入れた行動ではないことが非常に多いです。パワハラが横行することで職場の雰囲気が悪くなったり、チームによる業務運営に支障をきたすケースも少なくありません。

少なくとも職員同士の風通しが悪く、お互いの関係が良好と言えない状態では、たとえ加害者側に嫌がらせの意図がなかったとしても、被害者側が不快に感じた時点でハラスメントに認定される場合があります。子どもたちに質の良い保育を提供するためにも、パワハラが発生しない職場環境を作ることが求められます。

ちなみに「あかるい職場応援団」には「どんなパワハラかチェック」というページがあり、職場に存在しているパワハラのタイプを診断できます。まずはこの診断で、今の職場に問題がないかチェックしてみてはいかがでしょうか。

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