安心して働ける職場を作るために。園長や主任に求められること

保育園は職員に占める女性の比率が高く、他の業種に比べると職場いじめが多いと言われています。保育士は子どもと向き合うだけでなく、事務や保護者対応といった幅広い業務をこなすことが求められており、ただでさえストレスの多い仕事です。

過重労働や職場いじめの標的になって心を病んでしまい、退職してしまうケースも少なくありません。職員を束ねる管理職は部下の心身の健康にも気を配る必要があります。

メンタルヘルスケアの種類とラインケアの重要性

厚生労働省は「事業場における労働者の心の健康作りのための指針」の中で、メンタルヘルスケアを大きく4つに分類しています。労働者本人による“セルフケア”、管理監督者による“ラインケア”、産業医や保健師などによる“事業場内スタッフによるケア”、そして専門機関や専門家による“事業場外資源によるケア”です。

まずは本人がストレスについて正しく理解し、ストレスを感じたら早い段階で対処するのが理想です。しかし本人がストレスに気付いていなかったり、個人ではどうにもできない問題に直面している場合もあります。

そんな時、そばにいる管理者が異変に気づき、業務負荷を調整したり精神的にサポートできる体制になっていれば、ストレスによる心身の不調予防につながります。管理監督者による“ラインケア”が果たす役割は重要です。

ラインケアですべきこと

一般保育士への接し方

保育園においては園長や主任といった役職についている人に、一般保育士の管理監督責任があります。“監督”には仕事をきちんと遂行で来ているかをチェックするだけでなく一般保育士の健康を守る役割もあります。

遅刻や欠勤が増えたり仕事でのミスが目立つようになるなど、いつもと様子が違う職員をいち早く察知できるよう健康状態に気を配るとともに、良好な関係を築くことが必要です。そのためには日頃から部下の話をしっかりと“聴く”ように心がけましょう。

一般的に相手の話を最後まで聞かず、一方的に自分の主張を押し通すような管理職の場合、部下との関係が希薄であることが多いです。このような状態では普段の仕事にも支障が出かねません。役職に就いている以上、部下との良好な関係を築くように努力するのは責務です。ギクシャクしている部下がいる場合には、自ら率先して改善に努めましょう。

異変に気づいたら

もし様子がおかしい職員がいた場合には、本人の話をじっくり“聴く”ことから始めましょう。相手の話をさえぎるようなことがあれば、決して信頼してもらえません。相手を丸ごと受け止める姿勢を示し、相手の立場に立って話を傾聴することが大切です。

他人事と思って聞いている場合、無意識に発言が批判的になったり、ぞんざいな態度を取ってしまうことが多くなりがちです。相手に不信感を与えてしまうと表面的な話に終始してしまい、重要な話が聞けなくなる可能性が高まります。その結果、問題を正確に把握することが難しくなり、解決の糸口も見出せなくなってしまいます。

産業医や保健師への相談

いつもと様子が違う原因が病気である場合もあります。しかし病気かどうかを判断するのは医師の仕事です。病気の可能性がある場合には、産業医のところに行かせるなどの対処をしましょう。

産業医への相談を勧めても、「忙しい職場に迷惑をかけたくない」とか「人に悩みを相談するのに抵抗がある」ような人も少なからずいます。そういった場合は本人の了承を得た上で、代理で産業医に相談しアドバイスをもらう方法もあります。

決して無理強いはせず、本人にとって一番好ましい手段を検討してください。その際、本人のプライバシーには細心の注意を払い、個人情報保護への配慮も怠らないようにしましょう。

ストレス要因への対応

仕事のストレスは主に「仕事の自由度」「仕事の要求度」「周囲からの支援」という3つの要因によってとらえる事ができます。管理職はこれらバランスをある程度調整できる立場にあるはずです。本人からヒアリングする際には、この3つの要因を念頭に置いて話を聴き、できる限りの改善を図りましょう。

また気温や湿度、作業方法、人間関係といった職場環境によるストレスの可能性も考えられます。職場環境の改善は園全体で取り組む必要があります。職員全員で力を合わせて改善するという雰囲気を作ることが、一番の近道かもしれません。

職場復帰者への配慮

病気療養などで休業していた人が復帰した場合、「職場で自分はどう思われているのだろうか」「職場に適応できるだろうか」などと不安をたくさん抱えています。園長や主任が誰よりもそんな不安に理解を示すことは、復職者の緊張を緩和するだけでなく、他の職員の心も和らげます。

復職してしばらくは休業前と同じ量の仕事をこなすことは難しいことが多いため、仕事の分量を適切に調節することも必要です。厚生労働省の「15分でわかるラインによるケア」では復職者への復帰支援のポイントとして7項目を挙げています。

1)特別な理由がない限り元の職場に戻す。

2)他の部下と同様に処遇し、特別扱いをしない。

3)作業内容は元の職場に比較して単純なものを労働時間に見合った量だけ与える。納期の厳しい作業は避ける。

4)復職者の心理状態には波があるので良好な状態、低下した状態、平均的な状態に区分し、それぞれのレベルと接続時間を総合して回復状況を把握する。

5)順調に回復しているようにみえる場合でも、3~6ヶ月後に再燃することがある。

6)長時間にわたる定期的な通院が必要な者が多いが、「通院することはよいことだ」と支持する。

7)医師から出されている薬を飲むことに対する否定的な発言をしない。

復職者支援はいろいろと気を遣う場面も多く、負担に感じられるかもしれません。しかし働きやすい職場環境を整えることは、質の良い保育の実現には欠かせないことです。また復職者が無事に復帰したという事例を増やすことは、職場の相対的な評価を上げることにもつながります。状況が一進一退することもありますが、長期的視点で根気良くケアを続けていくことが大切です。

<参考>厚生労働省:みんなのメンタルヘルス

参考:女性経理社員の上司に対する意識調査

経理担当者様向け情報サイト「経理プラス」を運営する株式会社ラクスが、経理部門で働く女性社員200名行った調査では、6割以上が「嫌いな上司」がいると回答しています。その上司を嫌いだと思う理由のトップ3は「態度が大きい、偉そう」(26.8%)、「上司や他部署に意見を通さない」(25.2%)、「決断力がない、決断が遅い」(18.7%)となっています。

上司を尊敬できる理由としては「仕事がデキる、能力が高い」(27.5%)が最も多く、2番目に多かった回答は「指示や説明が的確」「相談できる、話を聞い てくれる」「部下への気遣いがある」が同率で21.3%でした。

企業の経理部門と保育園では職場環境や仕事内容が全く異なりますが、女性の割合が多い点には類似性があります。こういった調査結果も参考にしながら、上手な部下の管理に努めたいものです。

<参考>経理プラス:6割以上の経理女子に「嫌いな上司」がいる! 嫌いな上司・理想の上司の実態を徹底検証

まとめ

一般的に精神的に参ってしまうのは、真面目で仕事熱心な人が多いと言われています。万が一、不調が現れた際には軽度のうちに対処しましょう。同僚に迷惑をかけたくない一心で頑張りすぎた結果、病状を悪化させてしまうケースも少なくありません。園長や主任が無理をさせないようにすることで、影響を最小限に留めることが可能です。

優秀な保育士を手放す事態になれば、人手不足は悪化します。採用にもコストが発生するため、園の運営においてはデメリットばかりです。今いるスタッフの職場環境を整え、一人ひとりの能力を育てていくことは、子どもたちへの保育にも良い影響を与えるのではないでしょうか。

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