包括的ケアメソッド「ユマニチュード」に学ぶ子どもとの接し方

こんにちは、ICTキッズ編集部です。突然ですが、皆さんは「ユマニチュード」という名称を聞いたことはありますか?これは木難しくてケアが困難だとされる高齢者や認知症患者のケアに大きな効果があるとして、日本でも3年ほど前から注目されているケアの技法です。この技法には、子どもとの接し方においても活用できる技術がたくさんあります。

ユマニチュードとは

ユマニチュード(Humanitude)はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によって作り出された、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法です。この技法は「人とは何か」「ケアをする人とは何か」と問う哲学と、それにもとづく150を超える実践技術から成り立っています。

 

≪出典≫

ユマニチュード入門:本田 美和子(著)、ロゼット・マレスコッティ(著)、イヴ・ ジネスト(著)

介護の現場において、ケアや処置を行うことが困難な場合は多々あります。介護を行う人にとって、なかなか言うことを聞いてくれない人や、着替えや入浴などに非協力的な人などは「困った人」「手のかかる人」とされがちです。

しかし当の本人は反抗しているわけではなく、自分が今何をされようとしているのかが理解できないために恐怖を感じ、ただ自分の身を守ろうとしているだけかもしれない…ユマニチュードではそのように考えます。

例えば介護施設では入浴の時間が決まっていて、ケアを受ける人が「今日は入浴はしたくない」と主張したとしても、決まりだからという理由で強制的にお風呂に連れて行くようなことがあれば、それは本来あるべきケアではないというのがユマニチュードの考え方です。強制的なケアが健康を害することは、多くの研究によって実証されており、ユマニチュードは強制ケアをゼロにすることを目指しています。

ユマニチュードの4つの柱

見ること

ユマニチュードでは「『相手を見ない』ということは、『あなたは存在しない』というメッセージを発していることにほかならない」と説明します。また、相手の視界に入る位置に自分の顔を持っていき、相手の視線をつかまえるような近づき方をしないと、特に認知機能が低下している場合はケアをする人に気付くことができず、不意を突かれて驚いてしまいます。

上から見下ろしたり横から近づいたりしても、ケアを受ける人の視界に入ることはできません。正面に回ったり、近くにぐっと寄ることで相手の存在を認め、自分の存在も認めてもらうことができる…つまり「見る」という行動も1つのコミュニケーションとなるのです。

話しかけること

認知症が進行した患者さんの場合、話しかけても適切な反応が得られないことは多いようです。でも、だからと言って「話さない人に話しかけなくてもいい」わけではありません。話すことができないおなかの赤ちゃんにも、お母さんは話しかけますよね。

ユマニチュードでは、今実施しているケアの内容を「ケアを受ける人へのメッセージ」と考え、その実況中継を行う「オート(自己)フィードバック」という技法を開発しています。次に行う作業を事前に言葉で伝えるので、ケアを受ける人も次に何をされるのかとおびえることもなくなりますし、このときに「気持ちいいでしょ?」といったポジティブな言葉も添えることで、反応が少ない人とも言葉によるコミュニケーションを増やすことができます。

触れること

歯の治療や予防接種など、医療の現場では「不快だけど触れられることを受け入れなければならない」場面がたくさんありますよね。不快ではあるけれども、必要であることを認識したうえで治療を受けています。しかし認知機能が低下してしまい、注射の必要性が理解できない人にとって、無理矢理腕を抑えつけられて針を刺されるのは恐怖ですよね。

ユマニチュードでは手首をつかむような行為はしません。強い力を加えたり素早く動いたりもしません。代わりに手のひらを開いて、広い面積で相手にやさしく触れます。しっかりと目を見て、話しかけて、やさしく触れながら信頼関係を築けば、手首をつかんだり強い力を加えなくても、きちんとケアができるのです。

立つこと

ユマニチュードにおいて、「立つ」ことも重要な柱の1つです。「立つ」と骨に荷重がかかるので、骨粗鬆症や筋肉の低下を防ぐことにつながりますし、血液の循環を改善し肺の容積を増やすことにもなります。考案者のジネスト氏は「立つことによって人は尊厳を自覚する」と説いており、自分の足で立つことによる心理的な効果も大きいのです。

ユマニチュードが大切にするもの

ユマニチュードではケアをする者とされる者が常に対等であり、特にケアを受ける人の尊厳を大切にしています。それは認知力が低下し、なかなか会話が成り立たない方に対しても同じです。ケアをする者が常に「あなたを大切に思っていますよ」というメッセージを送り続けることが、より良い医療や介護の現場をつくる足がかりとなります。

皆さんは「子どもが好き」「子どもの成長をともに分かち合いたい」という希望を胸に、保育士の道を選ばれたと思います。でも実際に働いてみると、言うことを聞いてくれない子どもがいたり、問題行動が目立つ子どもがいたり…いろいろなことが上手くいかなくて辞めてしまう方も少なくないのが現状ですよね。

もし今、保育士を辞めたいと思いながらこの記事を読んでいるのであれば、辞める決断をする前にユマニチュードの技法を取り入れてみてはいかがでしょうか?子どもとの良い関係を築くカギを手にすることができるかもしれませんよ。

≪参考≫
ユマニチュード入門:本田 美和子(著)、ロゼット・マレスコッティ(著)、イヴ・ ジネスト(著)