国や民間が進める待機児童解消のための取り組み

両手いっぱいの落ち葉を見せる女の子

無事に出産を終え、来年の春に向けて社会復帰を考えている女性たちの“保活”が本格化しはじめる時期になりました。園への問い合わせや見学の申し込みも、少しずつ増えているのではないでしょうか。とはいえ「保育園落ちた、日本死ね」のツイート以降、待機児童解消が盛んに叫ばれてはいるものの、施設不足や保育士不足といった問題はまだまだ解消に至っていません。

待機児童の現状

遊びに集中する少女

厚生労働省は2017年9月1日、全国の待機児童数が4月1日時点で前年比2,528人増の2万6,081人と発表しました。待機児童の定義を見直し、親が育休中の場合もデータに含めた結果、前年よりも増加したということです。

一方、野村総合研究所が発表した待機児童数の推計は、全国で約34万6,000人となっています。これは厚労省のデータの約13倍の数値です。厚労省の定義に該当しない「施設に申し込みをしていない児童」や「親が特定の施設だけを希望している児童」、また「親が求職活動をしていない児童」なども含めたため、このような結果になっています。

この数値を見ると「預ける場所が決まっていないと安心して求職活動ができない。けれども、仕事が決まっていないと保育園に優先的に入ることができない…」というジレンマの間で頭を抱えている家庭が多いことが予想され、状況は深刻であると言わざるを得ません。

<参考>
毎日新聞:利用待ち、34万人 定義外含め 待機児童の13倍に 野村総研推計
日本経済新聞:待機児童、減らぬワケ 3年連続増2.6万人

東京都が行った保育士の実態調査

「給与・賞与等の改善」がおよそ6割

出典:東京都保育士実態調査報告書(平成26年3月)

2014年に東京都が発表した保育士の実態調査の中では、現場の改善希望点の上位は「給与・賞与等の改善」が59.0%、「職員数の増員」が40.4%、「事務・雑務の軽減」が34.9%となっています。待遇への不満や人手不足の現状や、事務・雑務の負担が大きいことがうかがえます。

施設別にみると民間や認証保育所の不満が強い

出典:東京都保育士実態調査報告書(平成26年3月)

施設別の集計を見てみると、「給与・賞与等」については、運営主体が民営の就業施設や認証保育所(東京都が独自の基準で設置している保育所で、認可保育所とは異なる)の改善要望が目立ちます。また「事務・雑務」については、運営主体が民営の施設の不満が強いようです。

<参考>
東京都福祉保健局:保育士実態調査報告書(平成26年3月)

国や自治体の新たな取り組み

高台から見下ろす町並み

保育所不足解消のためには、施設数の充実もさることながら保育士の確保が不可欠です。これまでも国や地方自治体が保育士の給与水準の引き上げや、保育所のICTシステム導入を支援する補助金の創設、ブランクのある有資格者向けの復職セミナーの開催など、さまざまな施策が進められています。

保育士の子どもを優先して保育所へ

母親のそばで絵を描く子ども

2017年10月2日の朝日新聞では、政府が全国の自治体に対し、保育士の子どもが来年度から優先的に認可保育施設に入れるようにすることを要請したとの報道が出ています。実施するかどうかはそれぞれの自治体が判断することになりますが、すでに実施している自治体もあるそうです。

認可保育所の場合、親の働き方などが点数化され、入所の順位付けがされます。この通知では、保育士の子どもが利用できる可能性が高まるような点数付けを求めているとのことです。

保育士不足は特に都市部で深刻で、スタッフを確保できず定員を削減せざるを得ない施設もあります。今回の要請を受けて、保育士の子どもが優先的に保育園に通えるようになれば、十分な設備が整っているのに保育士不足で受け入れできない保育所の問題を解決につながるかもしれません。

<参考>
朝日新聞:保育士の子、優先的に保育所へ 政府、全国自治体に要請

補助金申請の電子化

ノートパソコンのキーボード

2017年10月3日の日本経済新聞には、保育所の業務負担軽減を目的として、補助金申請に必要な行政手続きの電子化を進めるために情報の統一基準をつくる、との報道が出ています。背景には、現在もほとんどの自治体が書類でやり取りをしていることが挙げられます。

これには経産省と厚生労働省、内閣府、総務省が連携して取り組み、年内から東京・神奈川などの保育所と自治体、民間のシステム会社が協力して手続きの電子化を試験的に開始します。なお、試験導入に必要な資金は政府が支援します。補助金の申請に際しては自治体ごとに必要な情報が異なりますが、どの自治体でも必要な情報だけをスムーズに取り込めるよう全国で統一したフォーマットをつくる方針のようです。

保育の現場では、連絡帳のやり取りや電話などでの欠席連絡も、スマホでできるシステムの開発や導入が既に進んでおり、18年度以降、子どもの体温チェックなどの健康管理のような場面でもICTの活用を促す方針とのことです。

<参考>
日本経済新聞:保育所のIT活用支援 4府省、補助申請電子化など

銀行の兼業規制の緩和

お金と書類とボールペン

待機児童問題については、民間でもさまざまな取り組みが進められています。独自に保育所を設けている企業も増え、近年は一般にも開放する動きが出ています。銀行でも企業内保育所を設置するケースが増えていますが、銀行には銀行法による兼業規制があり、これまでは一般に開放することが難しいとされていました。

2017年9月、金融庁は銀行内に設けた保育所について、従業員以外でも利用できるよう規制を緩和する通達を出しました。これを受け、三井住友銀行は所有する都内3か所の建物の一角をニチイ学館へ賃貸し、ニチイ学館が保育所を運営することを発表しました。いずれも2018年4月の開所予定で、近隣企業や地域住民にも開放されます。

<参考>
日本経済新聞:銀行内保育所、地域住民にも開放 金融庁が規制緩和
三井住友銀行プレスリリース:企業主導型保育事業への取組について

まとめ

待機児童を解消するために、官民一体となった対策が進められています。みんなが笑顔で生活できる環境が整うまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、一歩ずつ前進していけるよう、社会全体で協力していくことが必要です。

では、私たちがそれぞれの立場で何をしたらいいのか?一番にすべきは一人ひとりの意識改革だと思います。電車の中で乳幼児が泣いているのを見て舌打ちするのではなく、周りにいる全ての人がほほえましく思い、困っているお母さんにそっと手を差し伸べる…そんな心のゆとりが、今の日本社会には欠けているのではないでしょうか。

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