年々難しくなる保護者対応。クレームをこじれさせない秘訣とは?

保育園や幼稚園において、たくさんの子どもたちの面倒を看ながら、保護者と十分にコミュニケーションをとるのは難しいものです。最近はクレームの質も多様化し、対応に苦慮する先生も多いのではないでしょうか。今回はクレームの対処法についてご紹介します。

クレームが起こる原因

同じ出来事であっても、Aちゃんのお母さんからは感謝されたのに、Bくんのお母さんからは苦情が出た・・・というような事は非常に多いと思います。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

クレームとは「苦情」のことです。規模の大小にかかわらず、クレームが発生するのは「保護者が抱いていた期待の水準」を大きく下回った場合です。保護者の期待に応えるために、日々努力を重ねている皆さんにとっては非常にツライ話になりますが、保護者の考え方は十人十色で感じ方も人それぞれです。当然「期待の水準」もそれぞれに異なるため、すべての人を満足させることは不可能と言わざるを得ません。

たいていのクレームは些細なことの積み重ね

クレームの多くは小さなミスを何度も繰り返すことで、大きく”育って”しまいます。「子どもに薬を飲ませるのを忘れた」「忘れたことを保護者に報告しそびれた」等、誰でも1度や2度はしてしまうような失敗でも、何度も重なれば相手の不満は増幅します。

また誤解が生じる原因は、コミュニケーション不足によるところが大きいものです。保護者に必要な情報が正しく伝わっていないケースもあります。園だよりにお知らせを掲載しても、保護者が確認していなければ伝わっていないのと同じです。

保育士同士でこまめに情報共有し、お互いに注意喚起ができるような環境づくりをすることや、保護者がいつでも見たい時に園の情報にアクセスできる仕組みを作ることが、クレームの発生を抑えることにつながるかもしれません。

クレームを鎮める4つの手順

大切な我が子のためとなると、過剰にヒートアップする保護者も多いですよね。ちょっとした誤解によって生じたクレームであっても冷静に話を聞いてもらえず、なかなか事情を理解してもらえないケースもあります。こんな時、一体どのように対処したら良いのでしょうか。

(1)相手の話をよく聴き、可能な限りの共感を示す

クレームが発生したら、まずは「不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」と、相手が気分を害したことについて謝罪しましょう。その上で相手の言い分を一通り聞くことが大切です。勘違いや勝手な思い込みによる主張もあるかもしれませんが、はじめのうちはグッとこらえて聞き役に徹しましょう。

その際、相手の心情を良く理解することを心がけ、共感できる部分については「おっしゃる通りですね」「お気持ちはわかります」などという言葉を添え、相手を受け入れる姿勢を示しましょう。苦情を申し出る人は「自分のことを理解してもらえない」「受け入れられていない」という悲しみを心の奥底に抱えています。部分的であっても共感を示すことができれば、その悲しみを癒すことにつながり、怒りを鎮静化させられます。

(2)事実を確認して、謝るべきは謝る

感情が高ぶっている場合、人は論理的に話すことが難しくなるので、同じことを何度も言ってしまったり、つじつまの合わない話も出てくるかもしれません。根気よく話を聞いて、ある程度内容が把握できたところで、「何について」不満を持っていて「どうしてほしい」と考えているのかを相手と一緒に確認してみましょう。

そしてあなたが当事者で、自分に非があった場合には素直に謝りましょう。ヘンに意地を張ったりするとこじれてしまいます。その上で、事態の経緯や事情などを丁寧に説明しましょう。

もし自分以外のスタッフに対する苦情だった場合には、スタッフと保護者の言い分が食い違うこともあると思います。謝ることと非を認めることは別問題です。しっかりとスタッフにも事実確認をした上で、相手の言い分が正しく、こちらに非がある場合には素直に謝罪しましょう。

調査をしてみると、明らかに言いがかりをつけられているケースもあるかもしれません。そのようなときには「誤解を招くようなことがあった」として、誤解させてしまった点について謝罪しましょう。たとえ園に問題点がなかったとしても、このような対処をすることで落とし所を探しやすくなります。

(3)問題の解決策や代替案を提示する

謝罪すべき点は謝罪した上で、相手の要望にできる限り寄り添う形の再発防止策や問題の解決策を提案しましょう。園にはたくさんの子どもが預けられていて、できることとできないことがあるのは当然です。「要望に100%応えることは不可能だけれども、ここまでならできます」というように、きちんと筋を通して丁寧に説明すれば、きっと理解していただけます。

(4)クレームへの「お詫び」と「感謝」をする

クレームを言われる側も辛いですが、クレームを言う側も決して気持ちの良いものではありません。保護者の大半は「園にもっと良くなってほしいと願っているからこそ苦情を申し出ている」と考え、一定の決着がついた時には、改めてお詫びと感謝の気持ちを伝えましょう。

立ち位置が違えば、見える景色も変わってきます。視野を広く持ち、子どもたちに質の良い保育を提供するためには、保護者の協力が必要不可欠です。「今後もお気づきの点があれば教えてください」といった言葉を添えて、一緒に子どもたちを育てていきたいという姿勢を示すことができれば、より一層保護者との絆が深まるのではないでしょうか。

クレームをおさめる言葉や態度の選び方

クレームが発生した場合、相づちや言葉の選び方に気をつけるだけで、相手の気持ちが落ち着くことがあります。また、クッション言葉を適切に使ったり、謝罪の言葉を言い切るなど、話し方にも注意しましょう。語尾を伸ばさないようにするだけでも、真摯で誠実な態度に感じさせることができます。

相づちのタイミングは適切に

会話に合わせて「そうですね」とうなずくことで、相手に話を聞いているという姿勢を示します。相手の言葉を復唱するのも効果的です。逆に相手の言葉をさえぎったり、「はいはい」などと適当な相づちを打ったり、言葉をかぶせるようにして自分の主張をしてしまうと、話を聞く気がないと思われて余計にこじれてしまいます。常に相手の気持ちを受け入れる態度を示すように心がけましょう。

クッション言葉をうまく使う

何かをお願いしなければならない時には、「恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」などのクッション言葉を添えましょう。これだけで印象がかなり良くなります。他にも「差し支えなければ」「よろしければ」といったバリエーションを覚えておくと良いでしょう。

どうしても相手の意に沿えない場合には、「大変申し上げにくいのですが」などの言葉を添えた上で代替案を提示します。その際、できないことをストレートに「できません」と言ってしまうと、拒否・拒絶の印象が強くなってしまいます。語尾を「いたしかねます」にしたり、「●●であれば可能です」といった肯定表現に改めましょう。

NGワードを避ける

「そのようなことはないと思いますが」のように、相手の言い分を否定するような言葉は避けましょう。「ですから」「あのですね」といった受け答えも、上から目線の態度と受け取られてしまいます。自分が相手の立場だったらどう感じるかを良く考え、配慮ある言葉を選ぶようにしましょう。

問題を大きくしないために

どんなに丁寧に対応し、誠意をもって謝っても事態の収拾がつかないこともあります。だからといって相手を適当にあしらったり、できもしない約束をしてその場を取り繕ったりすると、余計に問題が大きくなってしまいます。そのような事態を招かないための対処法も、あわせて覚えておきましょう。

早めに誰かに相談する

クレームが発生したら、すみやかに誰かに相談しましょう。クレームを隠したり、対応を先延ばしにすればするほど、事態は悪化してしまいます。自分1人で対処が可能なレベルであっても、クレームが起こった事実を園全体で共有することは、2次的3次的なトラブルの回避につながります。

また1人で手に負えないような場合には、第三者に介入してもらうことで当事者同士が落ち着きを取り戻すきっかけにもなり、事態を好転させる可能性があります。保護者と仲の良い保育士や先輩保育士に仲裁を依頼するのも良い方法です。

園の代表としての責任を持つ

クレーム対応の際は園の代表として話をする必要があります。自分1人で解決できるかどうかを見極め、「100%大丈夫!」と言いきる自信がないのであれば、1秒でも早く誰かに助けを求めましょう。こじれてしまった場合には、主任や園長といったしかるべき立場の人に対応してもらった方が、丸く収まることも多々あります。

役職についている人は日頃からスタッフへの声掛けを行い、何でも相談できる雰囲気作りに努めましょう。普段から頭ごなしに叱り飛ばすようなことがあれば、誰からも相談してもらえません。リスク回避のためには、問題が起こった時に迅速に対処できる環境を、自らの手で整えておくことが肝要です。

守れない約束はしない

その場しのぎで不確かな約束をしたり、できもしないことを「できる」と言うのは絶対にNGです。園の代表として対応をする以上、守れない約束をしてはいけません。もし判断ができないときは、たとえ時間がかかっても、しかるべき立場の人に必ず確認をしましょう。

誠実な態度をとれるかどうかが問題解決のカギになります。ここをおろそかにしてしまうと、円満に解決することはできないと肝に銘じましょう。

別の日に話し合いの機会を設ける

事実確認に時間がかかったり、いくら議論しても落とし所が見つからないような時には、日を改めて話し合いの場を設けましょう。少し時間をおくことで、お互いに冷静さを取り戻せる可能性があります。また時間をかけて解決策を検討することで、より相手の理解を得やすい提案ができるかもしれません。

多忙な保護者に時間を取ってもらうのは気が引けるかもしれません。でも仲たがいをした大人たちの間に挟まれながら、園に通わなければならない園児は誰よりも不幸です。子どもが気持ちよく園での生活を送るために必要なプロセスであることを説明し、理解を得るよう努めましょう。

時には芝居も必要

園に全く非がない場合でも、相手の感情が先行してしまって、どうしても建設的な話し合いができないことがあります。そんな時には、保護者の前で主任や園長が保育士に注意を与えることで、その場を収めるといった方法もあります。あまり褒められた対処法ではありませんが、理屈が通用しない相手への奥の手として、頭の隅に留めておくとよいかもしれません。

その場合には保育士の名誉を守るためにも個室を用意し、限られた人の前でのパフォーマンスに留めましょう。注意を受ける保育士にとって明らかに理不尽な話になる場合には、事後のケアも必ず行いましょう。

この方法はあくまでも最後の手段です。日常的にこのような事を行っている園は、間違いなく信用を失います。こういった手法に頼ることのないよう、保護者との円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

まとめ

クレームへの対処は「相手の気持ちを理解する事」から始まります。日頃から相手を思いやる言動を心がけていれば、クレームが大きくなることはまずありません。万が一、クレームが発生しても、相手の心情を理解した上で対応すれば、必ず問題は解決できます。

逆に対処の仕方を誤ってクレームを大きくしてしまうと、お詫びの品を用意したり訪問による謝罪が必要になったりと、余計なコストが発生してしまいます。保護者の間で悪い噂が立つような事があれば、翌年の園児の募集にも影響が出かねません。

クレームを穏便に収められるかどうかは、1次対応の質にかかっています。またクレーム対応には一定のスキルが必要です。クレーム対応の研修を実施するなど、スタッフには丁寧に教育し、保護者との良好な関係作りに努めましょう。また発生したクレームについては必ず検証し、同じようなことを繰り返すことのないよう、再発防止策を講じましょう。

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