経営分析と覚えておきたい財務指標

自身の健康状態を確かめるために、健康診断や人間ドックを定期的に行っている方も多くいるでしょう。これらは現在の時点で病気にかかっていないかを確認できるだけでなく、血液検査や身体測定などの数値から、今後かかりやすい病気を予測し、それを防ぐための対策を考えることにも役立ちます。

企業においても、定期的に財務状況などを確かめることは、企業の業績や財務状況を、正確に理解するためにとても大事な作業です。特に経営者にとっては、今後のビジョンを考えるにも企業の現状をあらゆる方向から観察する必要があります。今回は、経営者の皆さんが関心を寄せている「経営分析」について、利用される指標まで詳しく解説したいと思います。

経営分析とは?

「企業を大きくしたい」「もっと売り上げを伸ばしたい」などと、経営者が考えるのは当たり前のことかと思いますが、先のことを見据えて経営戦略や経営方針を定めるためには”企業の現状”をしっかりと把握していなければなりません。

企業の決算期には、税務署提出書類や株主総会用に「決算書」を作成します。この決算書における財務諸表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書など)は、決算以外にも銀行融資や取引先などにも利用されますが、その他に”企業の財務状況”を確かめるためにも利用されます。

この財務諸表に記された数々の数値を利用して、企業の財務状況を確かめることが「経営分析」であり、これは「会社の健康診断」ともいわれています。経営分析をすることは、企業の現状を正確に捉えるだけでなく、未来を予測した経営戦略を立てるためにも有効です。

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5つの観点と財務指標の種類

企業の現状を把握するにあたっては、企業の現状をあらゆる角度から分析する必要があります。その観点は「収益性」「安全性」「成長性」「生産性」「効率性(活動性)」と5つに分けられます。それぞれで財務諸表の数値を利用した指標がありますので、観点ごとに分けてみていきましょう。

収益性

収益性の分析は、企業がどれだけの利益を生むことが出来ているのかを確認するのに用いられます。収益性をはかる指標は、資本に対する収益性と、売り上げに対する収益性とに分けられます。

・総資本経常利益率(ROA: Return On Assets)

総資本経常利益率は、経営分析における代表的な指標の1つです。企業が投入した資本からどれだけの利益を上げられたのかを確認することができ、この数値が高いほど収益性が高いということになります。

総資本経常利益率(%)= 経常利益 / 総資本 × 100

・自己資本当期純利益率( ROE:Return On Equity )

自己資本当期純利益率は、株主の出資資金からどれだけの当期純利益を生むことが出来たのかを示し、値が大きいほど効率よく資本を運用できているということになります。

自己資本当期純利益率(%)= 当期純利益 / 自己資本(株主総資本) × 100

・売上高総利益率

売上高に対する売上高総利益の比率を表す指標で、粗利率とも呼ばれます。企業の大まかな利益率を把握できる基本的な指標であり、値が大きいほど自社の製品・商品の収益力が強いといえます。

売上高総利益率(%) = 売上高総利益 / 売上高 × 100

・売上高営業利益率

売上高に対する営業利益の比率を表す指標で、企業の営業力がそのまま反映されるので、値が大きいほどよいとされています。値が低い場合は、営業利益を得るための経費が多くかかっていることを意味します。

売上高営業利益率(%) = 営業利益 / 売上高 × 100

・売上高経常利益率

売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を示します。営業活動と財務活動の両方の収益を示すものなので、企業の業績を表す重要な指標ともいえます。値が大きいほど収益性が高いと評価できます。

売上高経常利益率(%)= 経常利益 / 売上高 × 100

安全性

安全性の分析は、銀行などからの借り入れに対する企業の返済能力をみるものです。資金調達と運用のバランスを確認して、支払い能力を判断するのに役立ちます。

・流動比率

流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合を示します。流動負債はすぐに返済すべき負債で、流動資産はすぐに現金化できる資産であるため、流動比率が高ければ、会社の短期的な返済能力が高いといえます。基本的には200%以上であると良いとされています。

流動比率(%)= 流動資産 / 流動負債 × 100

・当座比率

当座比率は流動比率と同様に、企業の短期的な支払い能力を示すものです。流動資産のなかでも現金化しやすい当座資産での比率となるため、より詳細な企業の返済能力が確認できます。

当座比率(%)= 当座資産 / 流動負債 × 100

・固定比率

固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を示します。固定資産(建物や設備など)が自己資本の範囲に収まっているかを確認するため、値は低いほど良いとされます。適切な範囲で設備投資を行っているかを判断する目安にもなります。

固定比率(%)= 固定資産 / 自己資本 × 100

・自己資本比率

自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合を示します。自己資本比率が高いほど、それだけ借入金割合が少ないことを意味しますので、健全な運営ができていると判断できます。

自己資本比率(%)= 自己資本 / 総資本 × 100

成長性

成長性分析は、売上や利益の増加率などから、これまで企業がどのように成長してきたかを示します。また、企業が成長する可能性や成長速度の判断にも利用されます。

・売上高増加率

売上高増加率では、前期の売上に対して今期はどれだけ売り上げが伸びたかを確認できます。単年度で見るのではなく、前年度までと比較してみるのが基本となり、もちろん値が大きくなっていくほど良いと判断できます。

売上高増加率(%)= (当期売上高 - 前期売上高) / 前期売上高 × 100

・経常利益増加率

当期末と前期末とを比較して、経常利益がどれだけ増加しているかを確認することが出来ます。また、無駄な経費が発生していないかどうかも分かります。したがって値が大きいほど良いとされます。

利益増加率(%)= (当期経常利益 - 前期経常利益) / 前期経常利益 × 100

・従業員増加率

従業員増加率は、その名の通り従業員の増加で企業がどれだけ成長したかを判断できます。ただし、設備投資による効率化で従業員が減少する場合も想定されますので、一概に従業員数だけでは判断できない部分もあります。

従業員増加率 (%)=(当期従業員数 - 前期従業員数)/ 前期従業員数 × 100

生産性

生産性の分析では、企業が「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源を効率的に利用して、どれだけ付加価値を生みだしたのか確認することができます。

・労働生産性

労働生産性では、従業員1人あたりがどれだけの付加価値を産出しているかを確認することができます。値が大きいほど従業員が生み出す付加価値も大きいことを意味します。過去の実績などから算出した企業の適正値を基準として、それよりも値が小さくなっているようであれば組織の見直しなども検討しなければなりません。

労働生産性(円)= 付加価値額 / 平均従業員数

・資本生産性

資本生産性は、投入した資本1円につき付加価値が金額としてどれだけ創造されたかを示します。資本生産性が高い企業というのは、少ない設備投資で大きな付加価値を生み出しているということになります。

資本生産性(円)= 付加価値額 / 総資本

・労働分配率

労働分配率は、付加価値に対する人件費の比率を表す、財務分析の中でも重要な指標の1つです。労働分配率は通常40~60%程度だと言われていますが、業種などによって違いがありますので、企業における適正な労働比率を見極めることが大切になります。

労働分配率(%)= 人件費 / 付加価値額 × 100

効率性(活動性)

効率性(活動性)の分析では、収益を上げるために会社の財産を効率的に活用しているかどうかが確認できます。資本を有効に使い、多くの売り上げを産出しているほど効率性が高いといえます。

・総資本(総資産)回転率

総資本(総資産)回転率は、事業に投資した総資産がどれだけ有効に活用されたかを示す指標です。総資本に対して売上が大きい会社は「回転率が大きい」と表現され、回転率が大きいほど資産が有効に活用されているといえます。

総資本回転率(回) =売上高 / 総資本

・固定資産回転率

固定資産回転率とは固定資産と売上高の比率で、固定資産がどれだけ有効活用されているかを表す指標です。ただし業種などにより回転率は大幅に異なるため「何回転」が理想なのかは、同業他社の情報と比較しながら考えなければなりません。

固定資産回転率(回) = 売上高 / 固定資産も

ちろん回転率が良いほうが、固定資産を有効活用できていることにはなりますが、大きすぎる場合は設備投資を増やすことも検討しなければなりません。

まとめ

経営者にとって企業の健康状態を確認することは、現状を把握するためにも、今後の経営戦略を立てるためにもとても大切です。また健全な運営、成長力のある経営をするためには、分析した数値だけをただ見るのではなく、そこから浮かび上がる企業の欠点や問題点をいち早く認識し、対策を講じることが重要です。

今回解説した指標すべてを覚える必要はありません。自社に必要な指標がどれなのかをピックアップして、それでも難しい場合は税理士といった専門家の意見も取り入れましょう。今回の記事を足掛かりに、経営方針を定め、自社のサービス向上をはかっていただければ幸いです。