フィンランドの保育について勉強してみました!~完結編~

こんにちは!ICTキッズ編集部の吹野です!今回は、“フィンランドの保育について勉強してみました!”の完結編になります。第一弾「フィンランドの保育について勉強してみました!~その①~」では、保育の基本構造や幼稚園の目的という観点、第二弾「フィンランドの保育について勉強してみました!~その②~」では保育の特徴という観点からフィンランドと日本の保育の違いを学びました。完結編では、第一弾・第二弾の内容を踏まえつつ、自身の教育実習の体験談を元に子どもにとって魅力的な保育とはなにかを考察していきたいと思います。

教育実習日記における考察

以下の日記それぞれにひとつの概念を提示し、それをもとに客観的に分析していきましょう。

製作活動における教師の援助

「主体性保育」

この概念については以下のような視点が挙げられています。

・主体性保育とは、子どもたちが園でのびのびと活動し、主体的に楽しく生活することにより子どもたちの中から引き出していく保育です。

《日記① ○○幼稚園 4歳児 》

午前中の製作活動は、おりがみでコスモスととんぼを作り、それを画用紙に貼り、クレヨンで絵を描いて完成というものでした。この活動に必要な材料は、おりがみ、のり、のり板、そしてクレヨンです。初めは、先生が子どもたちにおりがみを配る場面で、先生が子どもたちに次のように声を掛けました。「今から先生がおりがみ屋さんを開くので、みんなはお道具箱のふたをバッグにしてお買いものに来て下さい。ピンクと紫と水色の中から好きな色を選んで買ってください。」子どもたちは、先生の声掛けに元気よく返事をしてバッグを持って並び始めました。子どもが「これください。」ろお金を先生に渡し、先生はお金を受け取り、「はい、どうぞ。またきてね~!」とおりがみを売り、答えます。子どもたちはおりがみを買うとルンルンして自分の席に戻ります。この一連の流れを通して思ったことは、おりがみを配るという主活動に入る前の準備の際にも子どもたちを楽しませたいという想いがあり、子どもたちが楽しいという気持ちを持って主活動を取り組めるよう配慮されていたということです。環境設定をおりがみ屋さんにすることで、子どもたちが生き生きとする姿が、見られました。

《客観的分析》

おりがみ屋さんを開くことで、子どもに主体性を持たせた活動ができていたと思います。自分で選択し、決定する楽しさを子どもたちの様子から見ることができました。では、この活動を担任の先生ではなく、実習生の私が行っていたら、同じような子どもの反応を見ることができていたでしょうか。担任の先生と子どもたちの間には信頼関係が成り立っている上に、愛着も育まれています。ここでいう愛着とは心理学における愛着と近いもので、他人や動物などに対して築く情緒的な結びつき、とくに幼児期までの子どもと育児する側との間に形成される母子関係を中心とした情緒的な結びつきをいいます。この愛着関係が生まれていたからこそ、子どもたちが安心して活動に取り組み、その後の主活動へもすんなりと入り込むことができたのではないでしょうか。

いけないことをいけないと伝えるための工夫

「幼児理解」
幼児を理解するとは一人一人の幼児と直接触れ合いながら、幼児の言動や表情から、思いや考えなどを理解し、かつ受け止め、その幼児の良さや可能性を理解しようとすることを指しています。(幼稚園教育指導資料第3集 幼児理解と評価)

《日記② ○○幼稚園 4歳児》

お昼の時間。お弁当をお友達や実習生と楽しく食べていた時のことです。この時担任の先生はお手洗いに行っていました。突然、大きな泣き声が廊下から聞こえてきました。すると、担任の先生がクラスに戻り、「ねぇ、みんな聞いてー!」と大きな声で呼びかけ、子どもたちの注目を集めました。子どもたちの聞く準備ができたことを確認し、話始めました。「○ちゃんと○ちゃんがトイレの中をのぞいていました。みんなはまさかこんなことしないよね?大人になったら本当に捕まっちゃうからね。絶対にしてはいけません。」と話し、子どもたちと一緒にしてはいけないことを確認しました。話によると、先生がトイレに行ったら、二人の女の子が他の先生がトイレに入っているところをのぞいていたというのです。先生はこの二人の言動に気付いたとき、頭ごなしに叱るのではなく、「もしもし、警察ですか?すぐに来て下さい」と二人に聞こえるような声で言いました。二人の女の子は先生が本当に警察に電話したのだと思い、大泣きし始めました。二人がした行動はいけないことだと先生はこどもたちに自発的に気付かせる方法で注意しました。先生は演技をすることで、子どもたちに自発的に気付いてほしいという思いがありました。子どもの実態、特徴を把握していた担任の先生だからこそできた注意の仕方であったということです。

《客観的分析》

この事例も先程述べた信頼関係や愛着関係が成立している必要がありますが、今回は幼児理解という観点から分析したいと思います。先生は子どもたちに対し、直接注意するのではなく演技をすることで、子どもたちが自分自身で気付き行動するよう援助されていました。では、他のクラスでも同じような方法で注意をしていたとしたらどうでしょうか。先生も述べていましたが、このクラスの特徴は「素直」でした。素直に先生の話に耳を傾け、それを受け入れられる体勢が整っていました。このようにクラス全体の子どもたちの特徴を把握することで、どのような援助をすれば良いのかを考え行動することができます。もちろん一人ひとりの個性や特徴を掴むことが第一ですが、クラス全体という集団で捉えた視点を持つことでより良い援助ができるのではないでしょうか。

自由遊びの大切さ~子どもの世界に触れる

「自由遊び」
子どもは、自由に遊ぶことを通して人間として生きてゆくための基礎的な能力を習得します。遊びは知育やお稽古事のように効果が目に見えて現れないために疎かにされがちですが、幼児期の子どもには最も必要なことです。自由遊びで大切なことは、子どもの自発的な興味や関心です。保育者は子どもの興味や関心を引き出すために場所や玩具を準備して手助けをしますが、なるべく子どもの邪魔をしないようにそれぞれの手仕事などをしながら見守ります。

《日記③ 自由遊びの時間において》

ある日の外遊びの時間、ひとりの女の子が空を指しながら「シンデレラの靴!」とつぶやきました。私は不思議に思って空を見上げると雲の形がシンデレラのガラスの靴のようだったのです。この時、私は子どもの世界に連れていってもらった気がしてとても嬉しく、子どもたちは私たち大人が気付かないことに毎日気付いていて、毎日新しい発見をしています。子どもたちが毎日多くの発見をするためには、子どもたちが自由に過ごせる時間を多く設けることであると思います。それは、毎日同じような遊びやお椅子に座って先生から指示を受けながら行う活動では新たな発見が生まれないからです。子どもたちが見る世界を広げてあげることgは保育者の役割の一つであると思いますので、まずは適切な環境設定をすることが必要です。子どもたちは思ったことを口にしていなくても、色々なことを心の中で感じ取っています。それを保育者がくみ取り、次の新たな発見へと繋げてあげることができれば子どもたちの園生活はより楽しくなり、それぞれの生き生きとした姿を見ることができるのではないでしょうか。

《客観的分析》

子どもが上記のような発見をすることができたのは、彼らの興味や関心を抱くきっかけとなったものがその環境にあったからです。その環境とは自由遊びの時間であり、子どもたちが主体的に行動できるよう用意された空間です。この事例の場合、保育者の援助というのは、子どもたちが自発的に行動できるように見守っていたことであると思います。子どもたちの中へ積極的に参加していくことも愛着関係を育む上で大切なことであると思いますが、その場の子どもたちの様子を見て、「見守る」というのも大切な援助の仕方なのではないでしょか。

まとめ~完結編~

これまで第1弾から完結編まで、フィンランドの保育を中心にそれぞれのテーマに沿って『子どもにとって魅力的な保育』とはどのようなものかについて考察してきました。

第1弾では実際の子どもとの関わりを通して自由保育とは何なのかを考えました。私が思う自由保育とは、保育者が子どもにある程度の枠組みを用意し、子どもたちはその枠組みの中で主体となり自由に選択できるものであると思います。保育者が何の枠組みも作らず、子どもを自由に遊ばせるというのは本当の意味で自由とは言えないと思います。それは放任になります。また、その時々の子どもの実態や興味・関心を把握した上での環境設定が必要であると思います。

第2弾ではフィンランド保育の特徴を分析し、それを日本で生かせる点はないかを考えました。フィンランドの保育の特徴として見習うべき点は多くありましたが、保育者の子どもたちをどっしりと見守る暖かな姿勢が印象的でした。日本では子どもたちと関わり、一緒に遊ぶことで保育者と子どもの間に愛着や信頼関係が育まれると考えられているように見られますが、フィンランドでは子どもたちが保育者に助けを求めない限りは、遠くから温かく見守るという姿勢をとっています。これは、子どもたちの主体性を大切にしているからです。また、子ども同士でトラブルが起きた際には、必ず意見と理由を聞くというのも子どもたちの自分で考える力が育まれると思うので、日本でも真似していきたい点であると思います。

また、いきいきしているとはどのような状態なのかについて考察しました。子どもたちがいきいきしているというのは、子どもたちが自分で選択し自己決定できるという状態です。また、互いの意見に耳を傾け合い、尊重しあえる人間関係の上で成立します。そのような状態を保つために保育者が配慮すべきことは、それぞれの子の発達に応じてそれに見合った指導をすること、また子どもの声に耳を傾け、自発的な発達の意欲を見守ることであります。

完結編では教育実習という実体験を通して印象深かったエピソードをもとに保育者としての観点から考察し分析しました。それぞれの日記で注目した概念や視点は異なりますが、どのエピソードでも共通する点がありました。それは保育者と子どもの間にある信頼や愛着関係です。これは時間と共に育まれるものですが、保育者が子どもたちと信頼関係を築きたいという想いや楽しませたいという気持ちを強く持つこと、そのために子ども一人ひとりの発達や特徴、またクラス全体の特性を把握することで、どのような援助をしていけばいいのか考えることが大切だと思います。子どもの声に耳を傾け、限られた時間を「まだ何分ある」というように積み上げていくことで子どもたちの心持ちも変わっていくのではないでしょうか。

最後に、子どもにとって魅力的な保育とは何か・・・それは、子どもたち自身が主体となって自由に選択でき決定できるよう、保育者が子どもの実態や特徴、興味・関心を考慮した上での環境設定を行い、その中で子どもたちの自発的な意欲を見守ることではないでしょうか。

 

 

◆参考文献

・自由保育とは何か(著者 立川多恵子・上垣内伸子・浜口順子/発行所 株式会社フレーベル館)
・世界の幼児教育・保育改革と学力(著者 泉千勢・一見真理子・汐見稔幸/発行所 株式会社 明石書店)
・フィンランドの子育てと保育(著者 藤井ニエメラみどり・高橋/発行所 株式会社 明石書店)
・世界の保育と遊び(著者 国際幼児教育学会/発行所 丸善メイツ株式会社)
・子どもの育ちと遊び(著者 川村晴子・中村利恵・増原喜代・内山明子/発行所 朱)
・月刊 クーヨン しあわせになる教育/2009年4月1日発行/発行所 クレヨンハウス
・幼稚園教育指導資料第3集 幼児理解と評価(平成22年7月改訂)